園長のひとり言

成熟のなかにある答え【園長のひとり言】

2018-10-12
カテゴリー: 園長のひとり言, 未分類 

東野圭吾さんの小説ガリレオシリーズ「真夏の方程式」に、こんな一説があります。

 

『どんな問題にも答えは必ずある。だけどそれはすぐに導き出せるとはかぎらない。

人生においてもそうだ。今すぐには答えを出せない問題なんて、これから先、いくつも現れるだろう。そのたびに悩むことには価値がある。しかし焦る必要はない。答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない。だから人間は学び、努力し、自分を磨かなきゃいけないんだ。』

 

これは、ある海辺の町で起きた事件のなかで明らかになる真実を前にして、湯川先生が少年にかけた言葉です。ネタバレになってしまうので詳細は書けないけれど、この後に天才物理学者の感動するセリフが続きます。関心のある方は是非、読んでみてください。

 

と、この一説を紹介したのは保育の現場でもよく目にする課題と共通していたから。たとえば保育者の想いや言葉がなかなか子どもたちに届かない、とかね。何度注意しても同じことを繰り返す子どもの姿はご家庭でも珍しくないはずです。

 

そのような時に、どうして、なんで分かってくれないのだろうと保育者は悩みます。が、結果的として、その状況はなかなか改善しません。そして、また次の日も同じことを注意していたりします。

 

ここで大切なのは子どもに保育者の言葉が伝わっていないというより、その想いが届く為には子ども自身のさらなる発達や成長が求められている場合も少なくないということです。

 

だからこそ保育者はクラス全体の安定を考えなければなりません。例えば幼児のクラス。ココには3歳児から5歳児の異年齢で編成された3つのクラスがあります。当然、そこには多様な感性や気質の子どもたちが混在しています。もちろん性格もそれぞれで、穏やかな子もいれば、やんちゃな子もいます。

 

保育者の視点で言えば子どもたちが、みんな穏やかに仲良く過ごしてくれていたとしたら悩むことはないでしょう。でも、その様なことはありえません。そうだとすれば、どうしたらクラス全体が落ち着いて過ごせるかを考えるしかないのです。

 

しかし、それはクラスの全員が落ち着いていることではありません。全体と全員は違います。社会全体の幸せが、その社会の全員が幸せになることではないように、です。

 

それぞれの個性が、ぶつかり合いながらも互いに補い合ったり、異なる年齢からそれぞれの特性を活かして繋がったり。それらクラスとしての成熟が、ひとり一人の子どもの成長を持ち上げ、そしてひとつの集団として全体の落ち着きへと繋がっていくのです。

 

その意味では春からはじまった新しいクラスは、秋から冬にかけて集団として成熟していく楽しみな時期となります。

 

あ、それからご家庭においても同じです。子どもの成長と家族の成熟は、おそらく不可分に結びついているはずなので役割は違いますが、ともに子どもたちのより豊かな育ちを願って学び、努力し、磨いていきましょう。